育児・教育のジャーナリストで心理カウンセラーでもある「おおたよしまさ」さん
曰く「結婚しただけでは夫婦は仮免許」だと言います。
大事なのは結婚した後で、さまざまな局面を乗り越えて始めて本免許を取得できるのです。
多様化が叫ばれて様々な状況や異文化を受け入れようという動きが広まっていますが、夫婦こそ一番の異文化なのかもしれません。
形だけでなく本当に夫婦として継続するためには何が必要なのでしょうか?
おおたよしまさ著「<喧嘩とセックス>夫婦のお作法」から局面別の作法について考えていきます。

 

 

セックスレスを乗り越える

 

一夫多妻制が前提であるならば、「夫婦」となるとお互いにセックスできるのは相手だけです。
何をするにしてもお互いの同意がなければ遂行できないとすれば、「する」「しない」の意思を持つ者も中で、「しない」を選択した側が尊重されます。
つまりセックスを拒否する側の意思の方が「したい」と思っている側よりも重くなるのです。
ということで、簡単に夫婦は相手のセックスをする権利を奪ってしまえるのです。
「セックスをしたい」と片方が思っていても「しない」方がいれば実現不能になり、かと言って他の人とのセックスは許されない。
したくても拒否されている側は非常に辛い状況におかれています。
自分の機嫌がいいときはセックスに応じ、悪いときは拒む。
条件づけることで、簡単に相手をコントロールすることができます。
若いときにはAVに対する興味の延長線上の性欲を満たすだけの言わば「非日常のセックス」もだんだんとスキンシップをとる愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌される「日常のセックス」になるのが理想です。
セックスだけでなく夫婦はライフステージの変化と共にぎくしゃくするときが必ずあります。
それは新たな進化をめざして今までの快適な状態「コンフォートゾーン」を抜けだそうとしている時期です。
コンフォートゾーンを抜け出して挑戦しなければ、新しいステージには立てません。
だからセックスレスも新しいステージへ向かう一時的な困難で、それを乗り越えれば新たな絆で結ばれるといいます。

 

産後クライシスの正体

 

妻が出産すると愛情が冷めるという「産後クライシス」という言葉が定着しました。
確かに、子供が産まれたら今まで夫婦しかいなかったのに、今度は子供の世話が大変で夫婦関係は二の次です。
しかし、産後クライシスを叫ぶデータは一部の数字を切り取っただけで、実は出産後も妻への愛情が変わらない夫の方が圧倒的なのです。
でも「産後クライシス」が一人歩きしたことで、ことあるごとに夫が加害者となり責められる口実になってしまったようです。
しかし、実際に産後にぎくしゃくして離婚するケースもあります。
おおたさんは産後クライシス自体が問題ではなくもっと複合的な要因があると指摘します。
ストレスが貯まったときの行動のしかたが夫婦で真逆なのです。
妻はストレスがたまると、子供の世話をいつも以上に行うのに対し、夫はストレスが貯まると子供の世話をせずに、自分の部屋にこもります。
妻は育児を手伝わない夫に対して愛情が半減することが分かっています。
でも夫の方は妻の愛情を感じられなくてストレスを感じ、さらに家事育児から遠ざかるという悪循環になっているようです。

 

産後クライシスは夫のクライシスでもある

 

「産後うつ」は妻だけがなるのではなくて2割の夫が抑うつなどの精神面の不調を訴えています。
おおたさんのウェブサイト「パパの悩み相談横丁」では、家事育児に協力的なのに、妻に容赦なく罵倒され、疲弊した「都合のいい夫」の駆け込み寺となっています。
悩みを持ちかけるのは「産後クライシス」を盾にされて、妻に家事育児を強要されている夫です。
家事育児を全く非協力的な男性もいるのも事実ですが、妻に奴隷のように扱われている夫も同じようにいるのです。
妻の脅迫でイヤイヤやらされる育児は男性を疲弊させ、より育児から遠ざけるようになってしまうのです。
妻から育児家事のことでガミガミ言われると、妻を女性としてみることができず母親としてしか見えなくなります。
おおたさん曰く、セックスレスと同じようにまた産後クライシスも夫婦というものを機能させるための葛藤だといいます。
たとえば風邪を引いて発熱するのは、身体に入ったウィルスを殺す、ウィルスが熱で死ぬとすっきりして、また元気で活動できます。
抗生物質を飲んで無理矢理熱を引かせると、風邪に弱い体質になり、葛藤に出会う度にまたぶり返してしまいます。
夫婦が本音で語りあえば、産後クライシスを乗り越えて、夫婦として成長していけるでしょう。
おおたさんの著書は夫の側から見た夫婦関係の問題を取り上げています。
ただし、夫に強圧的な妻に対しての対処方法は書かれていませんでした。
強妻を変えるのはなかなか難しいようですね。