浮気をする人は、実は“完璧な嘘”をつくことができません。嘘の中には、必ずと言っていいほど“本当のこと”が混ざっています。
探偵として数々の調査を行ってきた経験上、浮気を疑われている人物の多くは、言い訳の中にほんの一部だけ真実を含めているのです。
たとえば、よくあるのが「今日は取引先と飲みに行く」という説明です。実際に調査をしてみると、最初は本当に男性数人で飲んでいる。ここまでは嘘ではありません。
依頼者の中には、「もし本当に男性と飲んでいるだけなら、その場で調査を終了して構いません」とあらかじめ伝えてくる方もいらっしゃいます。
しかし―本番はその“あと”です。
1軒目の飲み会が終わり、対象者は「お先に失礼します」と一人でその場を離れ、駅方向へ歩き出します。
電車に乗ると思いきや、改札には入らず、駅の反対口へ回り込み、まったく別の飲食店へ。そこで待っていた女性と合流し、しばらく飲食をした後、2人でホテルへと入っていく――。
これが浮気の典型的なパターンの一つです。
「男性と飲んでいた」と言っていたのは事実。しかし、目的はその後の女性との密会だった。
つまり、最初に“本当のこと”を混ぜているからこそ、相手に疑いを持たせにくくしているのです。
このようなケースは決して珍しくありません。
なかには依頼者が対象者から送られてきた「男同士で飲んでるよ」という写真を見て安心してしまい、「やっぱり浮気じゃなかったのかも…」と疑いを手放しかけることもあります。
ですが、調査を途中でやめてしまえば、その後の真実を見逃してしまう可能性があるのです。
また、浮気相手との直接的な接触がない場合でも、興味深い行動を見せることがあります。
たとえば、自宅最寄り駅に到着した対象者が、改札を出た後に急に歩くスピードを落とし、楽しげに誰かと電話をし始める。
近くの公園のベンチに腰掛け、しばらく会話を続けている姿――こうした行動も見逃せません。
通話内容に耳を傾けてみると、相手が女性であることが明らかになるケースも多く、名前の呼び方や会話の内容から、次に会う予定や相手の勤務先が推測できる場合もあります。
そこから会社のホームページを調べて、相手の女性を特定する手がかりを得ることもあるのです。
浮気調査というと、「証拠の写真さえ押さえればよい」と思われがちですが、実際には、何気ない行動や会話の中に、次の調査につながる“ヒント”が隠れていることもあります。
たとえその日に明確な接触がなかったとしても、「何もなかった」とは限りません。調査を通じて得られる情報は、今後の展開に大きく影響するのです。
最後まで“見届けること”の大切さ
依頼者の中には、「浮気をしていないならそれで安心だから、すぐに終わらせてください」と希望される方もいます。
しかし、調査現場においては、“その時点では白でも、その後に黒が出る”ということが少なくありません。
浮気をしている人ほど、慎重に行動し、「ごまかし」を織り交ぜたストーリーを構築しているものです。
だからこそ、私たちはいつも「最後まで見届けること」を大切にしています。
一部の真実に惑わされず、行動全体を見極めること。それこそが、隠された本当の姿にたどり着く唯一の方法なのです。