20代女性の家出。
調査の結果、彼女は都心の風俗街近くにあるアパートに暮らしていました。
調査員が張り込みを行い、そこから出てきたのは、金髪で派手なメイク、シャネルのバッグを持った若い女性。事前情報とは少し異なる外見でしたが、尾行の末に入っていったのは、徒歩数分の場所にある風俗店でした。
「娘です」と言った母、「違う」と言い張った父
お店のサイト、写真、店前での映像を元にご両親に確認したところ、母親は「娘です」と涙ながらに認めました。
一方、父親は「こんなポーズをするはずがない」「娘がこんな場所で働いているはずがない」と目をそらしました。
それは、現実から目を背けたいという、親としての心からの拒絶でもあったのだと思います。
潜入調査で明らかになった“本人”の証言
調査員が客として店に入り、彼女との会話を通して出身地、学生時代の部活、家族構成などが対象者と完全に一致。顔もよく見れば間違いなくご両親の娘さんでした。
その中で語られた日常には、想像を超えるリアルがありました。
「休みの日は毎回エステに行ってるの。ローションが毛穴に入り込んで抜けなくなるって言うから……」
風俗の仕事の影響は、肉体にも精神にも及んでいました。
皮膚の違和感を取り除くために、休みの日まで身体をケアし続ける。
そんな生活を続けながら、彼女はふと、こうも話しました。
「部屋に窓がないんだよ。自殺防止なんだって。」
働く環境そのものが、精神を追い詰めないための設計になっている現実。
明るいネオンの裏側には、誰にも見せられない日常がありました。
焦らず、急がず、少しずつ心の距離を縮めた
私たちは、すぐに親御さんとの再会を勧めることはしませんでした。
本人の心が準備できていない段階での接触は、かえって彼女を追い詰めてしまう可能性があるからです。
調査員は時間をかけて関係を築き、少しずつ「昼間の仕事に戻る選択肢」を提示しました。
やがて彼女は昼職への転職を決意し、自らの足で環境を変える一歩を踏み出しました。
数年後、実家の九州から届いた手紙
その後、ご両親と再会した彼女は地元・九州に戻り、現在は結婚して子どもと一緒に暮らしているとのこと。
ある日、実家から1通の手紙が届きました。
「あのとき、焦らず寄り添ってくれて本当にありがとうございました。今では、家族で笑って食卓を囲む日々を過ごしています。」
親子の関係が壊れそうになったとき、調査という手段が“つなぐきっかけ”になることもあります。
家出調査の本質は、ただ「見つけること」ではなく、「未来を取り戻すこと」——そう感じさせてくれた出来事でした。