マッチングアプリでの出会いから交際や結婚に至るカップルは年々増えています。以前は「ネットで知り合った」というと抵抗を感じる人も多かったものですが、いまではある程度は市民権を得た感があります。
しかしその一方で、マッチングアプリで出会った場合、従来の「友人や知人からの紹介」とは違い、相手の身元を裏付ける第三者が存在しません。本人が語る肩書や経歴を信じるしかなく、結婚に至るまでに「いいところだけを見てしまう」危険性があるのです。
柏市在住・Kさん(40歳男性)のケース
千葉県柏市に住むKさん(40歳)も、マッチングアプリ婚をしたひとりです。プロフィールには「代表取締役社長」と書かれていました。肩書だけを見れば華やかですが、実際には“社長”といっても従業員1名の小さな会社、しかも会社本店所在地は自宅の屋根裏部屋である。
仕事の実態は、知り合いの会社に出向いて道路工事の「手間請け」を行うというものでした。Kさん自身、その会社のトラックに乗り、現場で汗を流して働いています。
労働内容と収入
彼は1日あたり17,000円の日当で働き、さらに従業員を1人雇い、同じ現場で働かせています。元請けからは彼自身と従業員の双方に同じ日当が支払われるため、その合計が会社の売り上げとなります。年商はおよそ1,000万円で、従業員の給料は月30万円強です。
体ひとつで稼ぐため大きな経費はかかりませんが、売上から給与を計上し、法人税や消費税などの税金、さらに税理士費用を支払えば、会社に残る金額はわずかです。最終的に社長である彼の年収にあたる取り分は400万円台にとどまります。
そこからさらに、所得税や住民税、社会保険料といった個人の負担が差し引かれるのです。実際に手元に残る金額を思えば…とても「社長」という肩書きから連想される華やかさとは程遠く、想像したくもない現実が浮かび上がります。
真面目に働いていることは確かですが、その姿はむしろ堅実に働く一労働者に近く、一般に抱かれる“経営者”や“資産家”のイメージとのギャップはあまりにも大きいのです。
見栄とマッチングアプリの世界
Kさんにはもう一つの顔があります。高級車を購入し、いかにも“成功者”であるかのように振る舞うことです。最近話題の「残クレ(残価設定型ローン)」を利用してアルファードやベンツを乗り回し、周囲にはそのローンの存在を隠しています。
マッチングアプリで出会う女性には、最初のデートで必ずドライブに誘い「社長」「高級車」をアピール。あたかも裕福な暮らしをしているかのように演出します。
一方で、マッチングアプリを利用している女性の中には、30代後半になって結婚を真剣に考え、「経済力のある男性」を求める人も少なくありません。しかし、現実にはアプリに残っている男性は「余りもの」と揶揄されることもあります。
幻想と現実のはざまで
Kさんは、普段の厳しい肉体労働や等身大の自分からかけ離れた“夢”を女性に語り、女性はそれを信じ込む。結婚すれば一生安泰――そう錯覚してしまうのです。
やがて女性はすぐに妊娠し、二人は結婚。周囲から見れば「マッチングアプリでの幸せなゴールイン」と映るかもしれません。しかしその裏には、肩書や生活の実態に大きなギャップが潜んでいるのです。
そしてこの物語は、結婚後の生活でさらに現実味を帯びていきます。