ジャーナリスト富岡悠希氏の「妻が怖くて仕方がない」から現代夫婦が直面する沼の後半の2つの沼を紹介します。

 

 

DV沼

 

DVと言うと「夫から受けるもの」と思い込みがちですが、富岡さんは夫人からのDVに悩まされます。一度は肩が脱臼し救急車を呼ぶ事態になりますが、ここでも救急隊員から富岡さんが暴力をふるったのかと疑われます。それほど妻からのDVは認知されていないようです。
夫人が激高する理由はほんの些細なことで、一度は洗濯乾燥機の乾燥機能を使ったこと。前回に述べた通り富岡さんが夫人の借金を肩代わりしたことで、水道光熱費は夫人の負担になっていました。自分の稼いだ金は全部自分が使いたい夫人は少しの電気代の負担にも躍起になるようになっていました。ちなみに夫人は公務員なので収入は一般の賃金より上のはずなのですが……
妻は怒りにまかせてグーパンチを繰り返します。男性の方が力が強いに決まっていますが、反撃すると夫側のDVと認識されてしまいます。富岡さんが防戦一方にならざるを得ないというワケです。
DV問題にくわしい人権センターステップ理事長・栗原加代美さんによるとDVは夫婦どちらにも加害者的要素と被害者的要素があり、両方の問題を解決しないと根絶しないと言います。
加害者が些細なことで怒りやすい認知の歪みがあるのはもちろんですが、被害者側にも改善すべきところもあります。
それは「傾聴」と「二段階受容」です。まず相手の話をじっくりと聞き、「そうだね」と相手の意見をまず認めてから、反対意見があれば主張することが大事です。

 

シカト沼

 

野原広子さんのコミックエッセイ「妻が口をきいてくれません」のように突然妻がシカトするケースは意外と多いようです。30代から40代の既婚男性に行った調査では夫婦げんかの仕打ちできつかったものの2割がシカトを挙げています。
他の人には挨拶をするのに富岡さんの夫人も1年半に渡ってシカト。その言い分は「あんたのことは人として認めてないから」という恐ろしい言葉が返ってきました。

元プロ野球選手清原和博氏の薬物依存症の克服を手助けしたことで知られる示現寺住職・鈴木泰堂和尚は富岡さんの夫人は、貪瞋癡の三毒に侵されているといいます。
借金をするほどの物欲は「貪」むさぼりの心、感情にまかせて富岡さんをシカトするのは「瞋」怒りの心、すべてを富岡さんのせいにして、自らを省みないのは「癡」真理に対する無知の心です。
住職曰く「結婚も縁なら、離婚も縁」。
富岡さんが生きる者が持つ苦しみのひとつ「愛別離苦」=愛する者と別れる苦しみ、つまり夫人や子供たちと別れるのがイヤならば、たとえ夫人がシカトしても、自分だけは挨拶をかけ続けるしかないというのです。
富岡さんは住職の言葉を信じて夫人に挨拶を続けているようです。