二重人格や多重人格の設定は映画やドラマなどのエンタメだけの話……と思っていませんか? エンタメのような劇的な変化はないものの、私達は日常のトラウマによって、いろんな人格に分かれているのだとか。そんな心のメカニズムを分かりやすく解説した本が心療内科医である鈴木裕介氏著「がんばることをやめられない」です。

「解離」とは何か? どうしてそれが起こるのか解説します。

 

私とわたしの間で揺れ動く解離とは?

 

意外!? トラウマは日常でも簡単に

 

トラウマというと、大災害や事故や犯罪に巻き込まれたときに起こる印象がありますが、日常でもトラウマは起こります。

生死に関わるようなことや、夫や妻、恋人の浮気などの裏切り行為に関わる大きなトラウマを「ビッグT」、日常生活で起こる傷つきを「スモールt」といいます。
すべての人にビッグTがあるとは限らないですが、スモールtはどんな人にもあります。このスモールtのほとんどが幼い頃の両親との関係から起こるそうです。
たとえ親との関係が良好であってもスモールtは知らず知らずのうちに溜まっていきます。

小さな傷つきが沢山溜まり、その限界に達すると、理由もない怒りや悲しみになって、突如噴出します。

 

解離は自分の心を守るために起こる

 

「解離」はトラウマ反応の一種で、自分を守るために起こります。浮気などすごいショックを受けたときに人間の心は、家の電源のブレーカーが落ちるように、心と体の接続をオフにします。
辛くて耐えがたい現実でも、他人事のようにやり過ごすことができます。

メインの人格「私」を守るために、「私」をネットワークから切り離し、サブの回路「わたし」を作って、辛い経験は「わたし」に流します。

これが「解離」で、辛いことがあると、自然と私達は「解離」を行っています。

その解離には2種類があります。

1つ目は「ぼんやり解離」で、自分と世界との間に壁があるようなイメージ。意識をぼんやりすることで、苦痛を軽減します。辛い体験をした人が後になってそのときのことを覚えていないことが多いのもこれが理由です。

2つ目は区画化で、自分の心の中に壁をつくり、はっきりといくつもの「私」を分けるイメージです。
レベル1は「私」と「わたし」の2つに分かれています。
レベル2は1つの「私」とトラウマ担当の「わたし」が複数いる状態です。ある状況では大人しいのに、特定の状況では怒りっぽくなったり、逆に過度に相手の欲求に応えたりして疲弊するようになります。

レベル3になると、完全にエンタメによくある二重人格や多重人格になってしまいます。
解離は自分の心を守る防御策なので、悪いことではありません。無理矢理、人格を排除しようとするのは逆効果。

「わたし」も間違いなく私の一部だと認める以外にないのです。