探偵の歴史・欧米編

 

欧米の探偵の歴史は19世紀のフランスの一人の人物から始まったと言われています。
その名はウジェーヌ=フランソワ・ヴィドッグ。
前半生は悪事を働いて刑務所に入れられても、何度も脱獄を繰り返します。
後半生は暗黒社会の裏表を知り尽くした経歴を活かして、今度は犯罪を取り締まる方へ転身。
パリ警察の密偵になって、数々の難事件解決の手柄をたてます。
それがきっかけで、国家警察パリ地区犯罪捜査局を創設し初代局長に上り詰めます。
ここまでの経歴までは、前半生が雲霧仁左衛門で、後半生は鬼平犯科帳か、遠山の金さんのようです。
なんとレミゼラブルのジャン・バルジャンとジャン・バルジャンを追うジャベール警部。
この2人のモデルと言われています。
さらに、凄いのがこの後で、ここでやっと今までの経歴を活かして、捜査局を辞めた後に個人の捜査事務所を設立します。
これが今日の探偵事務所の元祖だと言われています。
この経歴の通り、その捜査手法は暗黒街に深く入りこむ犯罪スレスレの手法でした。
今では完全に違法捜査です。
一方で、犯罪者のリストと犯罪手法を分類して膨大なカードを作り、これを各地の警察に配備し、現在につながる科学的な犯罪捜査を確立しています。

その後、19世紀半ばにアメリカでピンカートン探偵社が設立されます。
設立者のアラン・ピーカントンは、リンカーン大統領の暗殺計画を未然に防いだことで一躍その名を知られるようになりました。

西部劇にもよく登場して、悪名高きお尋ね者を追跡していました。
設立当初は、警備業務を兼ねていたようです。
企業のストライキを事前に防ぐ業務が多くて、反面、事業家も労働組合側の人間に狙われていたようで、身辺警護が必要だったのでしょう。

現在のピンカートン社はフランスの警備会社に吸収され、警備業の方がメインになっています。

 

 

日本編

 

日本の名探偵のルーツは言われるのは銭形平次や半七捕物帖などの目明し、十手持ちと呼ばれるた人とイメージするかもしれません。

明治以降にイギリスのシャーロック・ホームズなどの探偵小説が輸入されましたが、原作がそのまま翻訳されたわけでありません。
というのも、そのまま訳しても、欧米文化に疎い日本人にはわかりづらいからです。
という訳で探偵も日本の人物に置き換えられて翻訳されました。
ホームズなどの名探偵は、目明しや十手持ち置き換えられました。

実際の江戸時代にいた目明しと言うのは、厳密に職業としてあったわけではなく、ましてや幕府や藩の役人でもありませんでした。

目明かしの存在が必要だったのは江戸時代の奉行所のシステムが原因です。
たとえば江戸町奉行ですが、南北町奉行所には南北同心=現在の警察官が各100人程度でした。
この人数で大江戸八百八町と呼ばれるどんどん人口が増殖する江戸の町の見回りをとてもまかない切れません。
そこで、同心が個人的に雇っていたのが目明しや道先案内という人たちだったのです。
なので、給料も決まったものはなく、同心のポケットマネーから出たり、あるいは目明しという立場を利用して他からお金を巻き上げるななどをして、収入を得ていました。

同心の給料でさえ、とてもそれだけでは生きていけないほどの薄給だったのです。
では、どうやって暮らしていたのか?
やはり、取り締まられる方から、賄賂いわゆる袖の下をもらっていたようです。
今では完全に違法ですが、江戸時代の役人は賄賂は常識で、むしろ賄賂を渡さない人の方が常識知らずとして批難されていたようですね。
「忠臣蔵」では浅野内匠頭が吉良上野介が要求した賄賂を拒否したことが発端だと言われていますが、吉良家の役職だった高家という家柄も、位が高いだけで、役職的には薄給でした。大名筋からの賄賂があってこそ生活が成り立っていたようです。

賄賂のおかげで、同心や目明しの暮らしは結構裕福だったんですね。

欧米も日本も初期の探偵の調査はグレーゾーンだったようです。

 

日本の場合明治以降になってから探偵社、興信所が登場

 

日本で本格的に探偵事務所ができたのは、明治20年代です。
元警視庁の警察官が退職後、設立したのがはじめです。
一方、同時期に日本初の興信所が設立されています。これは会社取引のための信用情報を調べる目的の組織でした。
当時は探偵社と興信所には明確な役割分担がありました。
現在は探偵事務所も興信所も2005年から施行された探偵業法に基づいた調査するもので、現在探偵事務所と興信所に明確な区分けはありません。
探偵事務所と言うとなじみのある言葉ですが、
「興信所ってなに?」と言う人も少なくありません。
現在興信所と名がついている調査会社は昔から、興信所という名前で、その名残りでそのまま興信所と名乗っている場合が多いようです。

 

まとめ

 

探偵と言えば、その発生と同時期にシャーロック・ホームズなどの探偵小説(現在の推理小説)が生まれたことで、フィクションと現実がごちゃごちゃになっています。
そのルーツをたどってみると、意外と架空の人物以上に劇的な人生を送っていることが分かりました。

現在の探偵事務所の調査は探偵業法にのっとっており、合法なのでご安心ください。